発端は、3年前に買ったSNK809のムーブメントを壊してしまった事。思えば風防を変えたり、針を変えたり、ケースを磨いたり、歩度調整のテストに使ったり・・好きなように部品を外しては付け、付けては外し、いじりたおしたことがいけなかったのでしょう。ついに止まってしまいました。
SNK809は大好きな時計の一つで、ただ壊れてしまったからとあきらめはつかず、新たに一本買おうと思ったことで一連の計画を始めます。
僕の好きな時計の中で、他にどうしても気になっていたことが一つあって、それはモディファイしたSKX009のカレンダーが白地であることで、黒地のネガ表示ならもっとカッコ良くなるんではないかなと思っていたことです。
今回SNK809が壊れたとなれば、黒地のカレンダーホイールが余ることになります。
そこで、
●SKX009のグレードアップ
SKX009のカレンダーを黒地にする。
カレンダーを変えるとなれば相当部品を外す作業が生まれるわけで、それならムーブメントも変えてしまおう。
ムーブメントは秒針停止・手巻きの可能なNH36ムーブメントにしてSKX009のグレードアップを図る。
●壊れたSNK809を甦らせる
苦労してグロスに磨き上げた(壊れた)SNK809のケースは放っておくには忍びないので、新たに購入するSNK809の中身だけを壊れたケースにもどして(壊れた)SNK809を甦らせる。
●余り物で新しい時計を組み上げる
新たにSKX007/009モディファイ用の文字盤と針を購入して、余った新らしいSNK809のケースに、同じく余ったSKX009の7S26ムーブメントを入れて新しい時計を組み上げる。
大好きなSKXと、SNKの合体です。
という3段階の計画です。
今回の内容は計画の第一段階、●SKX009のグレードアップです。
SKX009の7S26ムーブメントとNH36ムーブメントは大きさも構造的にもほぼ同じで、しかもNH36に装着されているスペーサーはSKX009のスペーサーと同じサイズです。
また、文字盤の干支足をはめ込む位置決めの穴はそのスペーサーに穿たれていますので、文字盤の装着も問題なしに行えます。
秒針停止と手巻きができない7S26からそれらを可能にするグレードアップには最適のムーブメントです。
いいことずくめのNH36ムーブメントですが、交換するにあたってクリアすべき大きな試練が2つあります。
Mov交換するためにクリアすべき事
1. ディホイール(以下曜車)の交換
秒針停止・手巻きの可能なNH36ムーブメントは、リューズ位置が3時位置に設定されています。
従って、ほぼ4時位置にリューズがあるSNK809や、SKX007/009にそのままセットすると、ムーブメントの傾き角度と曜車・日車の送り角の差で、特に曜車の表示に問題を生じます。カレンダー枠内で表示が傾きます。日車は誤差が少なく問題はありません。
そこで、一般的には曜車のみリューズ4時位置用の曜車に変更する必要があります。
(一般的には元の7S26の曜車を新しいNH36の曜車と交換します。今回は曜車・日車の色を変えたいのでともに交換します)
2. SKX009のリューズ
ムーブメントが変わると言うことは当然巻き真も変わります。NH36の巻き真を(長さを合わせて)SKXのリューズに装着する必要があります。
通常リューズと巻き真はネジでフィットしています。巻き真がリューズの穴にねじ込まれていることが多いです。
しかしSKX009のものはそうではないらしく、巻き真を固定してリューズを回しても外れません。固定されているようです。
(正確に確認したわけではないので間違っているかもしれません・・)
兎に角分離出来ないので、NH36の巻き真をSKX009のリューズに付けることは困難です。
この二つの試練にどう対応しようかな?
一つ目は、時計の中身を少し分解しなければならない技術的な問題。
【これは根気よく丁寧に落ち着いて作業することで乗り越えようと思います】
二つ目は、僕の技術ではどうすることもできません。
【SKX007/009モディファイ用の巻き真がセットされたリューズが販売されていますので、これを使います】
では、始めます。
パーツ
壊れて分解したNNK809
新しいNH36ムーブメント
リューズと巻き真
標準より少し大きめの、セイコーのスネーク「S」がレーザーで刻まれています。
「cryctaltime.net」で購入。
リューズを除いた今回必要なパーツ
では、早速新しいNH36の曜車を外します
曜車はムーブメント中心に飛び出た筒車にはめ込まれたCリング(止め座)で固定されています。
先の薄い精密ドライバーなどの工具でこじり持ち上げれば外れます。
ただし、外したはずみで飛ばしてしまうと・・・こんな小さな部品、老眼の僕には絶対探し出すことは不可能です。
で、ラップでカバーしながら作業しています。
止め座が外れれば、いわば置いてあるだけの曜車は簡単に外れます。
日車を外します。
今回は日車も変えたいので、一歩踏み込んで日車押さえ(金属板)を外します。
ネジは4ヶ所。慎重に外します。
日車押さえを取ると、日車も簡単に外すことができます。
この辺まで外すと、ムーブメントの地板にそっと置かれているだけの小さな部品を見ることができます。
ほんと、位置を示す小さな穴や刻みにそっと置かれているだけのものがありますので、ズレるとたいへんです。慎重に!
交換する日車をセットします。
日車の内側に刻まれた歯と日車ジャンパー(赤矢印)をかみ合わせて、ムーブメントとズレが無いように設置します。
日車押さえを置きます。
ねじ穴を目安にそっと慎重に正確に置きます。見た目水平にならず上下に動くことがあればどこかの部品にズレがあると考えられます。キッチリ水平にぶれなく置くことが一番大切な事なんですね(当たり前やけどね)。
ネジをもどしてしっかり固定します。
曜車をセットします。
曜車ジャンパーに噛む曜車の歯は曜車裏側に固定されていますから、あまり気をつかわず、上下にぶれなくセット出来ればOKです。
止め座で曜車を固定します。
止め座を中心に嵌めて、ピンセットの先などで押さえてやると、パチンと嵌まります。
さて、リューズを一段引き、前後に回して動作確認。
曜車・日車ともパチンパチンと切りかわればOK。それ以外は動作不良。どこかのかみ合わせが悪いということでやり直し!になってしまいますので、組み上げは慎重に行わなければなりません。
(ちなみに写真2ヶ所の矢印は文字盤の干支足が挿入される穴です)
ほんとのことを言えば・・・、僕は2回もやり直しをしました。曜車日車を回す歯車やジャンパーが少しズレてかみ合っていなかったりするんやろうね。ほんまにむずかしい。
SKX009の文字盤を外して、NH36に付けます。
セイコーのこのクラスの文字盤は干支足をスペーサーの穴に挿入してあるだけのもののようで、ドライバーで文字盤とスペーサーの隙間をこじれば外す(抜き取る?)ことができます。
小さなクランプやネジはないので、簡単ヤネ。
外した文字盤を、NH36に装着します。干支足の位置よりも、文字盤のカレンダー窓と、ムーブメントのリューズ位置の関係を目安にすると簡単にはめ込めます。
これでほぼ終了。
あとは、針を付けて、ケースに納めるだけ。
完成です。
最後に、このSKX009。2年位前かな、モディファイしたものなのですが、YouTubeに載せると、「これはSKX009ではない!良さが失われてしまっている!」などボロクソなコメントをもらったものです。
でも、僕は、サファイヤクリスタルの風防、コインエッジベゼル、ベゼルインサートはブルーのセラミック、この仕上がりに大満足しています。もともと大満足のこの時計に、「S」が刻まれたクラウン、ハッキング・ワインディング可能なムーブメントが加わったのですから、自分としてはもうこれ以上は無いわけで、年甲斐も無くウキウキしているこの頃です。
(実は今度、ブレスを、少し軽くて感覚的に安っぽく感じる標準のジュビリーからストラップコードのしっかりしたジュビリーに付け替えてみようと思っています。・・・もっとカッコ良くなるんとちゃうかぁ〜?と、とどまるところはないのかな?)
今回の一連の作業を動画にしています。
興味のある方は観てね。
さて、次の段階は壊れたSNK809のケースに新しいSNK809の中身を入れる。これは簡単ですね。入れ替えるだけだから。
そして、その次の段階、余り物で新しい時計を組み上げるのですが、これも作業の核心は(余った)SKX009用の中身をSNK809のケースに入れることです。
この場合、一番に問題になると思われるとリューズと巻き真ですが、ムーブメントが共通なので壊れたSNK809のものをそのまま利用できるので問題なし。だから簡単にできる。と、思って作業していると・・・・あれっ?ちょっとおかしい・・という事態になってしまいました。
このくだりは次回に記します。