スウィープセコンド・クォーツ200mダイバー “The STAC”

何年か前アウトレットに行った時、偶然入ったシチズンのショップで、とてもスムーズな秒針の動きをするブローバの時計を見つけました。店員さんに聞くと中身は日本製のクォーツともこと。クォーツ?一秒ごとにステップするクォーツしか知らない僕には驚きでした。まるでスプリングドライブのようにスムーズなのです。
ブローバと言えばかつて音叉時計で有名だったスイスのメーカーと記憶していますが、最近耳にすることも少なくなったメーカーです。でもそのなめらかな秒針の動きは魅力的で、値段も手が届きそう。衝動買いしようかなと思ったのですが、腕に巻くと大きくて・・、またデザインもどちらかというと無骨な感じで・・・、やっぱ、やめとこ。って事になったのですが、それ以来なめらかに秒針が動くクォーツが気になって、いろいろ調べたらブローバは現在シチズンの傘下で、従ってムーブメントもシチズン?ミヨタ?かなと調べてもなにも出ませんでした。

それから数年。京都の会社が作っているサブマリーナそっくりの「101(ヒャクイチ)」ってダイバーウォッチにスウィープセコンドのクォーツがあることに気付き、興味をそそられたのですが、実は何年も前に普通のクォーツの101を買って、その仕上げや工作精度に少々失望したことがあって、購買には至らなかったのです。
そして見つけたのがこのSTAC。

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STACもスウィープの101も価格帯やカレンダーが付かないところをみると多分同じムーブメントだろうと思われます。
双方ともメードインジャパン(を謳う)の200mダイバーですが、STACは写真を見るとなかなかユニークなクラシックスタイル。そして径は38mm。そう、最近の僕のお気に入りの小さな時計です。しかも値段も14千円程度とリーズナブル。
気になっていたスウィープセコンド。どんなものか試してみる価値あり!と思ったのですが・・・。

ロービートメカニカル?

手元に届いたSTAC。
早速開封すると、ん、ん・・? 秒針が思ったほどなめらかに動いていない。
そうです。このムーブメントはSII(セイコーインスツル)のVH31A型。 1/4 ステップモーター。一秒に4度時を刻みます。昔の懐中時計のようなロービートメカニカル14,400bphの秒針の動きと同じです。

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一秒ごとのステップではないので、普通のクォーツには見えませんが、21,600bphや28,800bphの機械式の動きには全く及びません。
僕の想像では、セイコーの比較的安いクォーツクロノグラフに使われている6T63などの1/5秒で動くセンターセコンドの様な動きを思っていたので少々失望ではありますが、ま、この時計の大きさ、クラシカルな雰囲気、ベージュの文字盤なんかの雰囲気からいえば、ロービート風の運針も合っているのかもしれません。秒針の動きはこの時計の第一の特長です。

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好み分かれるデザイン?

二つ目の特長は、虫眼鏡の様に分厚いシングルドームの風防です。
サファイヤクリスタルの替えガラスによくある円弧を描くドームでは無く、ボックス型の風防の形をそのままガラスで埋めたような形状をしています。この形状はとてもいいと思うのですが、正面から見ると、風防の縁が屈折しているのか風貌の縁が太いのか、かなり太めの乳白のパッキンを嵌めたように見えます。好みににも寄りますが虫眼鏡のようにも見えるし、なんとなく安っぽいね。
なんとも変わった見栄えではありますが、趣があると言えば趣があります。

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三つ目の特長は、十二角形の大きなリューズ(クラウン)です。
ケースからブレスレッドまで全てブラッシングでつや消し処理されたなかで、この12面だけはグロスに磨かれています。
ケースの大きさからすると大きめのクラウンと相まってキラキラとこの時計の風貌を印象づけます。
もちろんねじ込み式です。ねじ込みの感触もスムーズでよく出来ています。

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そのほか、全体的にガッチリ、しっかりとした作りになっているのは好印象です。
回転ベゼルはケースの縁より大きめ。つまりケース本体より径が大きく、冒頭に記した38mm(実測38.4mm)はベゼルの直径です。
回転はスムーズかつしっかりした剛性感があり、120のラチェットのクリック感もいい感じです。
裏蓋もきれいなドーム形状でなかなかカッコよく、いかにもダイバーらしい耐水性の強さを感じます。(実際水には浸けていませんが・・)
ブレスも組み合わせがしっかりしていて、弱い感じはありません。ラグ側のエンドピースは無垢ではありませんが、この値段域では仕方ないかな。
クラスプはしっかりダブルロックですが、残念なのはメインのロックがプッシュ式では無く爪で剥がすタイプで、しかもしっかり噛み込んでいるので爪のほうが心配になります。
ついでに残念なところ。文字盤です。円形のマーカーのダイバーによくあるタイプですが、プリントで刻まれた秒間を1/5に刻む小さなインデックスが12時6時の範囲(天地)はかろうじて見えるのですが、3時9時の範囲(左右)は隠れて見えません。こんなところに精度の差は出るんでしょうね。いっそ秒のインデックスをプリントしなければよかったのに。残念です。
蓄光もセイコーのダイバーのように長持ちはしませんが、自分の感覚では標準以上にしっかりと光ります(特に時分針)。
後で調べたことですが、このムーブメントは他の同クラスのクォーツムーブメントに比べ針を動かすトルクが大きいらしく、誇らしげに大きな針を付けています。でも、時分針はいいんですが、秒針が太すぎるのはあまり好きではありません。(いつか替えてしまおうと思っています)

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買って良かった?

買って良かったか残念かと聞かれたら・・・ちょっと残念に傾いているかな?
全体のフォルムは思った通りでいいんだけど、
普通、通販で買う時は写真を参考にして買うものですが、実物を見ると大抵は「写真よりいいね!」と思うのですが、今回は「ちょっとオモチャっぽいね」というのが正直な感想です。
最後に、精度ですが、一週間に3〜5秒遅れます・・・。クォーツなのに・・・?
数千円のアルバやQ&Q、チープカシオだってこんな誤差はでません。
機械式ムーブメントに見えるクォーツって言ったって、精度まで機械式をまねることはないと思うのですが・・。
残念が決定付く要因ですね。

兎にも角にも好き嫌いの分かれる個性的な印象の時計です。
径38mm、厚さ10.5mm、小柄な時計で、ともすればレディースにも見えかねない風貌ですが、しっかりとした重量感と剛性感は優れたものです。充分ダイバーウォッチです。
手頃な値段で小さなダイバーがほしい人にはお買い得。いいかもしれません。

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動画も観てね!

P.S.

予告

ハドリーローマの時計バンドを販売している「watch band selection」。新商品6点入荷しました。ぜひご覧ください。

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なんか、コロナで暗鬱な雰囲気のご時世に、時計のコメントもどっちか言うとマイナーな内容でごめんなさい。
ホントはパーッと明るい文章にしたかったけど、STACではパーッと明るくならんかったね。ほんとごめんなさい。
せめて最後に、今年も綺麗に咲いた桜を観てください。いい季節です。

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来年は心置きなく桜の咲く短い時間を楽しめることを心から祈願しています。

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