前々回の記事で初めて試したiPhoneアプリのタイムグラファーを使って、最近遅れ気味のSKX007(cal.7S26C)を調整してみます。(尚、現時点での自分なりの理解なので間違いがあればごめんなさい・・)
Watch Tuner / Timegrapher
iPhoneのアプリ『Watch Tuner / Timegrapher』は、iPhoneに付属のイヤフォンを接続し、音量調節スイッチに付いているマイクで、時計のテンプのチックタック音を拾って精度を計測してくれます。
例えば、柱時計の振り子が左に振れた時をチック、右に振れた時をタックとすると、一分間にチックが30回、タックが30回なら正確に時を刻んでいることになりますね。また、チック→タックとタック→チックの間隔が均等ならいいのですが不均等なら不安定になります。柱時計をチョット傾けて設置した感じやね。
腕時計の振り子は、ヒゲぜんまいで左右に行ったり来たり回転するテンプにあたりますので、テンプの左右回転時のチックタックを読めばその時計の精度がわかるということですね。
タイムグラファーが計測する主な点は二つ。
1. 精度(rate)
今回のSKX007、7s26Cムーブメントは(21600振動/時)なので一秒間に6振動、つまり一秒間にチックが3回、タックが3回ということになります。タイムグラファーは音でこれを計測します。
2. テンプの振り幅の誤差(beat error)
チック→タックとタック→チックの間隔の誤差を計測すると、テンプの回転の左右の振り幅の誤差が計測できることになります。正確な輪であるテンプは静止状態の中心から右への振り幅と左への振り幅が均等であることが望まれます。この誤差をミリ秒で計測します。
一般的に歩度の調整は、「緩急針(B)」でヒゲぜんまいの長さを調整し精度を決めることと、中心でテンプにつながるヒゲぜんまいの端っこを固定している「ヒゲ持ち(A)」の位置を調整しテンプの左右の振り幅を決めることで行いますので、上記の2点が計測できれば初心者としては十分であります。
解説はボロが出ないうちにこのへんにしておいて、
早速SKX007を計測してみます。
感覚的には一日一分くらい遅れるようになっていたSKX007です。
普通の時計なら、ケース側面や、リューズ、また裏蓋なんかにマイクを押しつけて計測出来るのですが、ダイバーのSKX007はケースも裏蓋も分厚く、リューズもガスケット付きのねじ込み式なので、どこにマイクを当てても音を拾ってくれません。
裏蓋を開けてテンプ付近の適当な場所にマイクをあてて計測します。
結果はこれ、感じていた遅れどおりですね。
精度は -45.2s/d、振り幅の誤差は 0.9ms、テンプの振り幅は 190度。
精度は自分の生活のペースに合わせて調整しますが、振り幅の誤差は 0.5ms以下、テンプの振り幅は 250度以上がいいようです。
まず「ヒゲ持ち(A)」を動かして誤差を出来るだけ小さくします。動かす方向は分からないので、任意の方向に動かして計測し数値が大きくなったら逆方向に・・というような方法で詰めていきます。
つぎに「緩急針(B)」を、今回の場合は進ませたいので写真左方向(ヒゲゼンマイを短くする方向・ムーブメントの座金に刻まれた+の方向)に動かします。
コレが基本的な手順。理にかなっていますが、実際やってみると手順どおりではいきません。
Aを触ってBを触って、Bを触ってAを触って・・あんまりやっていると時計を壊してしまうのではないかと心配になる素人ではあります。
途中経過がこれ、
右肩上がりにはなりましたが、誤差は余計悪くなったような・・・
但し、誤差の 1.4ms 、赤字はクオリティ48%。読み切っていないようです。
再びチョット触ってはグラフを確認し、またちょっと触るを何回も繰り返します。
(ホンマしんどい作業です。コツがわかれば一発でいけるんかなぁ〜?)
再び途中経過。
精度は 10.4s/d、いい感じ。でも誤差が詰められていません。なんでやろ?へたやからか?
で、繰り返しやったけど、もうあかん、ここが妥協点。
精度(+7.6)、誤差(0.2)ともいい感じ。でも振り幅218度は少ないのかもしれませんがこれを触る術を知りません。
本当は、地球の引力の影響で、ヒゲぜんまい・テンプは影響を受けるので、12時を上に立てた状態や3時を上にした場合、またその反対など幾つかの姿勢で計測して数値を詰めていくのが本筋らしいのですが、素人の僕には多すぎるデータを処理する能力がありません。
とりあえず、今、平置きの状態で詰めた現状で腕にはめて一日様子を見ます。
一日腕に着けて確認すると、改善はされていますが少し遅れています。5秒くらい。
(進めたつもりやのに・・・、これが姿勢差か?)
これは文句なく充分及第点ですが、やはり、遅れるのは少し嫌です。
そこで、気持ち程度進み気味にしようと、再度緩急針を調整。結果がこのグラフ。数秒だけ進みぎみに。(あんまり変わってないけどね・・)
これでまた一日様子を見ることにします。
さて、今回の歩度調整でわかった注意点。
1. 緩急針・ヒゲ持ちとも動かすのは、ほんのチョット。ほんとほんのチョット。
両針とも結構固く動きにくくしてるので、動かそうと力を入れると思わぬ大きさで動いてしまいます。
動かす幅は何度も言いますがホントほんのチョットなので細心の注意力と集中力で行わなければなりません。
2. 下手に力を入れると緩急針やヒゲ持ちの高さを変えてしまったり、最悪はヒゲゼンマイを毀損してしまうことも考えられます。こうなったら取り返しがつかず最悪なので、道具はそれなりに考えなくてはなりません。以前参考にさせていただいたどなたかのブログの中に、先の尖ったものがいいとあったので、今回バネ棒外しの工具の爪でない棒状の先をヤスリで尖らせて使いました。これでも、上下方向にミスをするとヒゲゼンマイを傷めるので注意が必要ですが、精密ドライバーを使うよりは使いやすいと感じました。いろいろ工夫せんとあかんみたいやね・・・。
次ぎに、今までの時計の扱い方を大反省!
ガンギ車・アンクル・ヒゲゼンマイ・テンプと繋がる脱進機は時計の命とは知ってたけど、こんなデリケートな調整で出来上がっているとは考えてもみんかった。
ホント小さく細く繊細なパーツがほんの十分の数ミリ、百分の数ミリの調整の上で成り立っているんやということを実感した次第です。
そら乱暴に扱ったらあかんわ。時計は。大事に扱わな。
そこで絶対やってはいけない自動巻き時計のゼンマイの巻き方
僕は今まで動いていない自動巻きを動かす時、またデスクワークが多く腕を動かす機会が少ない時、腕時計を手に持って拍手をするような動作や、腕時計を持った手で太ももをたたくような動作で、衝撃でローターを回してゼンマイを巻き上げるというようなことを頻繁に行っていました。実際、こうやると1たたきで1時間くらいは充分に動くだけゼンマイが巻けます。
とんでもないことやね! とんでもない!
絶対やったらあかん動作やったと大反省。
あたえたらアカン”衝撃”でゼンマイ巻いとったんやね。アホやったね。
そんなことやってたら、そら狂うようになるわ、こんな微妙でデリケートな中身やのに。
これからはリューズでの巻き上げができない時計は、腕をやさしく振って巻き上げることにします。
P.S.
それにしても、大谷くん。すごいね! 仮に今がピークやとしても、オープン戦から現在に至る過程を思えば、賢い子やからきっとシーズン終わるまでに2・3回は同じようなピークを迎えるやろね。たのしみやね!
SEIKOの古いムーブメントは姿勢誤差がとても大きいので、文字盤下向きの一番早く進む状態から3時上の一番遅く進む状態と比較し、日常どれだけ時計を使用するのか 7/24から12時間/日などを逆算して行います 一ヶ月位使用して、平均+1~10s/dに収まれば上出来だと思います それ以上はもう少し高級なムーブメントを選ぶか、腕の良い時計技師に分解掃除してもらうかしなければいけませんが物事には限界があります
絶対にしてはいけない自動巻きの巻き方ですが、スポーツウォッチの分類にあるSKX等はある程度の衝撃には耐えるようにできているので、拍手したり太ももにぶつけたりは走る&泳ぐのと同程度なので特に問題ないですね できるならしないほうが良いのは明らかですが、硬いものの上に落下させるほどは寿命が縮みません
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