ミヨタ SUPER 2035 ムーブメント
「自分さあ、電池交換できる?近所の時計屋に断らてん」(関西では相手のことを「自分」って言うことが多々あります)
「出来るよ。自分のん交換したしたことあるし。この時計か?」(この場合の「自分」は自分です。ややこしいねぇ)
「ん?文字盤に、なんかコロコロ転がってるで」
「あぁ、それ12時の飾りが取れてん」
「取れた、て、このままやったら針にひっかかって、時計動かんやん」
「そうやなぁ、なんとかならん?」
「やってみよかぁ?せやけどつぶれても知らんで。ええか?ええねんな?」
「近所の時計屋でも断られたもんやから、しゃあないわ、つぶれても」
と、いうような、わかったかわからんような訳で「FolliFollie」のファッション時計の電池交換と修理?です。
数年前に高島屋で4万円(+税)で買ったそうな。ファッション時計にしたら結構いい値段やね。(この値段覚えておいて下さい。あとで値段の話出てきますから)
とりあえず、内容の確認。
裏蓋を開けて、電池の規格を確認します。電池は「SR626SW」小さな電池です。
ちなみにこの種のボタン電池の記号末尾には「W」と「SW」がありますが、単純な2針や3針の時計には「SW」、照明が付いていたり、クロノグラフのような他針のもの、またデジタルのものなどは大きな電力がいるので「W」を使うのが一般的らしいです。
普通は「SW」、電力を多く使う多機能なものは「W」ということですね。
なので、普通の2針・3針時計の場合はどちらでもいいようなものだけど、できるだけムーブメントの規格に沿ったものがよろしい。と、いうことで「SR626SW」購入。近所の電気屋で300〜400円。
パッキン、ボロボロや・・。
裏蓋を開けた時に、ゴム紐のような細くて黒いものがボロボロっとでてきた。寿命を迎えたOリング(パッキン)です。
切れてボロボロなので再利用はできません。
引き受けた限りはキッチリやったらな!ということで、もともと買っておこうと思っていた腕時計用のOリングと、リューズ用のOリングをアマゾンで手配。
取れた12時の略字を元の位置に。
ムーブメントはミヨタの「SUPER2035」。この手のファッション時計によく使われているクオーツです。
リューズを抜いて(オシドリの位置などは後述)、文字盤ごとムーブメントを取り出し、裏返しに置いたペットボトルの蓋にチョコンと置いて。
ケース内にころがっている取れた略字をピンセットで取り出し、文字盤の12時位置に微量のアロンアルファで固定。
結構簡単に文字盤は元通りに。
さて、電池とOリングの交換にかかろ。
アマゾンから届いたものは以下。リューズ用Oリング、裏蓋用Oリングとセイコーのシリコングリース。リューズ用のOリングのケース、サイズ毎に区分けされています。以前割ピンを買った時も同じようなケースに入っていたのですが、サイズ表示のラベルがケースの裏に貼られており、ラベルを上にフタを開けると中身はバラバラ。サイズが分からなくなってしまったことがあります。どこかの国で作られたこの種の製品を開封する時は注意が必要です!


●まず、ベルトの一カ所(どこでもいいのだけど)バックル部分のバネ棒を押し込んで、ベルトの輪を解く。普通の美錠のベルトならこの工程はいりません。
●次ぎに、裏蓋用の工具で慎重に裏蓋をはずす。この場合はねじ込みなので左に回せばはずせます。
●裏蓋をはずしたところ。ミヨタの2035が見えます。時計の割に小さいね。
写真の線と矢印、線の部分(横に細長い部品)を精密ドライバーなどで矢印方向に押すと、「ピョン」っと電池が飛び出します。結構勢いよく飛び出すので注意がいります。
●で、出来るかどうか分からないけど、リューズのOリング交換のためにリューズを取り外します。
写真左側の円内。ほんの小さな穴が「おしどり」です。ここを押しながらリューズを引っ張るとリューズは簡単に抜けます。
穴が小さいので、バネ棒はずしの針などは太くて使えません。僕はコンパスの針で押しながら抜きました。
尚、引き抜く時、リューズは押し込んだ位置から引き抜きます。時刻合わせに使う一段引いた位置からでは抜けません。
リューズ用のパッキンはリューズのクラウンの内側にはめてあるだけの構造の様です。(間違っていたら指摘して下さい)
しかし、前のOリングは、たぶん文字盤の修理でリューズを外した時に脱落したのか、見当たりません。
適当な大きさのOリングを見つける以外ないようです。
1.4mmのOリングが合いそうなので、クラウンの中心におさめました。
●裏蓋の直径を測ると、26.6mmあります。そこで、買ったばかりのOリングのセットから、26mmと26.5mmを取り出し、合わせてみると、26mmがピッタリです。
ノギスのクチバシが裏蓋のOリングの溝までは入らないので、こういう結果になったのかな?
Oリングを買われる時には実測値の周辺のいくつかのサイズを買っておくことを薦めます。
●シリコングリースをOリングに慎重に塗布します。シリコングリースは水飴の様な感じで糸を引くくらいの粘度です。僕は専用の塗布器を持たないので、綿棒で塗ってみました。裏蓋に装着するとこんな感じ。うまくいきましたね。
あとはリューズを元に挿入(慎重に入れるとスッと入ります。くれぐれも慎重に。天真を曲げたりするとおしまいです)し、新しい電池を滑り込ませて、裏蓋を適当なトルクでねじ込み、完成です。
意外と簡単やね。電池交換だけに限れば専用の道具は裏蓋外しくらいで、あとは精密ドライバーとコンパスくらいあればできるかな。
それにしてもの、ファッション時計の値段。
何年前か知らんけど、4万円したって。確かにネットでみると、ベルトは違うけどほぼ同型のものが定価4万円。但しネット通販での実売価格は1.5〜2万円。
百貨店で買ったから定価販売やったんやろうね。
でも、FolliFollieの値付けはまだ他のより高級な10万超えるようなブランド物に比べれば良心的やとは思うけど。
中身のムーブメントはミヨタの汎用品、素人の僕らでも600円位で手に入るもの。ケースにしたって風防にしたって、飾り物のガラスにしたって、けっして上等とは言えず、ベゼルなんかもあきらかなメッキ。新しいうちはキラキラ綺麗に腕元を飾るんやろうけれど、少し手入れを怠ったら、きっと見るも無残になるやろうね。
定価4万円出せば、セイコー・シチズン・オリエントなんかの国産なら、実に立派で綺麗で信頼性のあるものが買えるよ。文字盤の略字が脱落するなんか考えられへん。
FolliFollieとかこのクラスのブランド品で、セイコーやシチズン、オリエントなんかに委託生産しているものは別として、たいていは安いmiyotaやETAの汎用クオーツムーブメント使って中国でチョコチョコッと生産しているものですよね。
腕時計選ぶなら、ブランド物ファッション時計でもしっかりした時計メーカーの製品を選びたいと思いますね。
使い捨て感覚でどんどん新しいものに買い換えられる身分なら別やけど、僕は出来ないので。
ま、価値観の違いかもしれないけど。