「安物買いの銭失い」にならないように注意しよう!
夏になるとメタルのベルトに交換したくなるというようなことを何回か前に書いていますが、純正のメタルベルトが買えない場合や、雰囲気の違うものがほしい場合など、どうしても外品のベルトしか選択肢がなくなります。
店頭で確かめて買えればいいのですが、その場合でもなかなか細かなチェックはできません。ネット通販などで買う場合は掲載されている写真しか判断材料はありません。
とても危険な買い物ですね。
そこで僕の経験から購入時の注意点をまとめました。

購入時の注意点
● コマ繋ぎの方式(割ピン・Cリング・板バネ・スクリューなど)を確認し、サイズ調整が可能な手段をあらかじめ確保しておく!
(道具を揃えて自分でやる。友達にたのむ。時計屋に頼む。など)
● 安物には手を出さない!
(少なくとも3千円以上、できれば5千円以上のものを選びましょう)
● 分厚いタイプは避ける!
(分厚いものを選ぶ場合は必ず5千円以上のもの、出来れば10千円前後またはそれ以上のものを選びましょう)
● 価格は時間の許す限りよく比較する!
(5千円の売価がついていても、どう見ても同じ商品が千円、2千円で売っていることがあります。そういう品は避ける)
● 工具・バネ棒以外のおまけつき商品には要注意!
(よく、革ベルト付きなどで販売しているものがありますが、商品もおまけも使えないケースがある)
● シャークメッシュと言われる商品はサイズ調整の方法をよく確かめて!
(チェーンを切断しないと調整できないものを買ってしまうと素人は大変です)
● 汎用品の弓カン付きのもの(ベルトの端っこが時計にフィットするよう円弧になっているもの)は避け、直カン式のものを選ぶ!
(時計の型式専用と謳われているものは別です。汎用のものはラジオペンチなどの工具で結構煩わしい作業が必要な場合が多く、よほど運が良くなければピッタリ着けることは出来ないと思った方がいいです。カン(エンドピース)が真っ直ぐな直カンのものはその心配がありません)
● 直カン式のものでも、写真を良く見てエンドピースが大きく太いものは避ける!
(自分の時計のベルト装着部分、ボディとバネ棒の隙間にはまるかどうかや、装着できてもエンドピースが時計に干渉し傷つける場合があるとエンドピースを削る加工が必要な場合もあります)
★ できれば純正品を手に入れる!
以上が鉄則です。
購入後の注意点
● タグなどあれば外す前に、商品の各部を充分にチェックする。ブレスの曲りかたがスムースか、クラスプのソリッド感は十分か、留め具のロックは確実に効くか。など。
● バネ棒が附属しているもの、これはありがたいのですが、バネ棒の強度をよく確かめてから装着する。(僕は、不良品のバネ棒の先が折れて時計を落としたことがあります)
● サイズ調整で余ったコマやピンの部品は必ず大切に取っておく。
● バネ棒はずしの工具は少なくとも千円以上のものを買っておく。(バネ棒はずしの工具は、品質が悪いと、やり直しの数が増え、時計を傷つけることが多くなります。また、作業中バネ棒自体がピョンとはねて紛失することも多くあります。少し高価でもよい工具はそれらの可能性を少なくしてくれます)
● ブレスの繋ぎのピン抜きは百均の工具でも十分ですが、ネジ式のしっかりした専用工具があればベターです。(ベルトを傷つける可能性が圧倒的に減ります)
一番重要な点。安物はだめ! なぜ?
写真だけを見ると、どれもとても立派に見えます。でも、安い物に多いのは、コマの動きが渋くて腕にフィットしない。角の面取りが不十分で痛い。いかにも安っぽい音がする。など問題の多い物がほとんどです。
特にバックル、留め具やアームの工作が悪く、ほとんどのものは耐久性に問題がある、もしくはすぐこわれる。と僕は思っています。
まったく使えなかった例を上げます。
「トンチャーメー シャークメッシュブレス ベルト ステンレス シルバー バックル式」
アマゾンで今年2月、2,999円で購入。革ベルト・バネ棒・バネ棒はずしなど盛りだくさんのおまけ付き。現在2,180円になっています。(安くなってる?これ自体おかしいよね)
千円・2千円のメタルベルトを買ってさんざん失敗したのに、これでとどめをさされた感じです。(3千円クラスならましやろ、と思ったのですが)
● バックルの留め具がキチンとロック出来ません。これだけで致命的です。
● おまけの革ベルトは、それはそれは恐ろしいほどチープです。ベルト自体がチープなだけでなく、バックルの針の付け根の遊びが大きく、留めても抜け落ちます。こんなもの見たことがありません。全く使えない代物です。いったいこのおまけにどんな意味があるの?って深く考え込んでしまいます。
商品到着後、シャークメッシュの長さ調整にばかり時間と気をとられて、ロックの不良に気づいたのはチェーンを切った後。そうです、後の祭り。
商品代金と、長さ調整に費やした時間をまるまる損しました。
もともと、バックル金具の工作が悪いのに加え、ベルトの厚みに対しバックル金具自体がフィットしていない。ということです。
図のようにバックルは A, B 二つのアームが支点で折りたたまれロック穴の付いたケースに収まります。
空の状態や薄いベルト装着の場合での動作はソリッド感はないものの問題はないのですが、分厚いベルトを装着すると(下図下段)、アームの設計に問題があるのか、折りたたんだ状態でアームとベルト、反対側ケース上端とベルトが干渉しロックピンがロック穴にきちんと収まりません。人差し指と親指でケースをつまんでエイっと力を入れるとアームが若干しなって、やっとロックされます。しかも、ロックピンとロック穴の位置設定が甘いのか少しずらし加減に押すというコツが必要です。
これは使えません。
ロック機構やアームの工作の不良は今までも経験した安物によくある症状です。
しかし、この製品の致命傷は、バックルの深さ4mm(実測)に対し、ベルトの厚みが最大4.3mmあることです。薄いベルトなら、不良でも許容できる遊びがこの商品にはありません。
なんとかベルトがバックルに収まっても、閉じた時にどこかで必ず干渉が起き、しっかりロックすることはできません。
ちなみに、商品の説明ではベルトの厚みは4mmと記されています。

値段で判断するのは本当は正確性を欠くのかもしれませんが、
5千円で買った別物(冒頭写真の右上)も使用実質半年でロックが甘くなってきています。
同じような使用方法でも、専用品(純正ではない)と謳われている9千円前後の品(複数)は問題なく使えています。
使えない物と、使える物の境界は、10千円前後かな・・。ま、ある程度のガイドラインになるのではないかと思います。
実売価格40〜60千円のミドルクラスの時計でも、純正のメタルベルトを買おうと思ったら15千円前後というのが普通ですから、10千円前後の出費はしかたないかなと思います。
P.S. 使えない商品の流通を許す、そんな国になってはいけません。
ネットには、このような安価をうたい文句に使えない商品が出回っています。こういう品を買って、安いんだから使えなくてもしかたがない。と諦めたり、自分で調整してなんとか使おう。とか、こういう風潮は日本の将来のためにも、おかしいと僕は思うのです。売る限りは値段はいくらであれ、使える物でなくては。
こんな状態で買い物をする若者がもの創りに携わった時に、本当にいい品を作ることができるのだろうかと。 使えるものを心を込めて作るという日本人として当たりまえの神経がマヒしてしまうのではないかと、心配になります。
インターネットは国の境界をはらい、インターナショナルであることはとてもいいことだと思うのですが、いい加減な他国の商習慣・生活習慣も同時に入ってきてしまいます。
これらに馴染んでしまうことが心配なのです。
日本にどこかの国のような神経をもつ人が多くなったら、日本は日本でなくなるのだから。
うーん、あやうく安物買いをするところでした。スーパーエンジニアタイプというのを物色していましたが、ベルトの厚みと金具が合わないなどという欠陥を具体的にご教示いただき、納得しました(ベルトの厚みに合いそうなバックルを別に買って交換してみる?という深みにハマりそうなことを考えてしまいましたけど。笑)。食品も含めて、日本基準で某国の製品を買うと、エライ目に遭うことがありますね。消費者の目が肥えてこないといけませんけれど、親世代が口を酸っぱくして言っても、安かろう悪かろうを知らない子世代にはなかなか通じないことも多くて・・・。
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こんにちは、小山さん。
ほんとその通りです。いろんな小物をネットで気軽に購入できるようになって、たくさん失敗して、はじめて日本のありがたさがわかるようになりました。
日本の誠実なものづくりや商売の文化が継承され、世界に広がってほしいですね。
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