ケースの鏡面磨き、やってみた。Seiko SNK803

グランドセイコーみたいなキレイな鏡面、出せるかな?

GS

素人の金属磨き顛末。

SNKシリーズのサンドブラストみたいな完全無反射のつや消しを、去年の3月に「一皮剥けば・・」と手持ちの材料で磨いてグロッシーにしたら一気に雰囲気がよくなったSNK803。当時はピカピカになってドレスウォッチとしても使えるといい気になっていたんですが、よく見てみると、表面は平滑でなく小さなデコボコのためかくすんで鏡面にはなっていないのがずっと気になっていました。
リューターの先端に最初はゴム砥石を付けて全体を荒磨きし、ホームセンターで買った(クルマのボディ用)荒キズ、小キズ取りのコンパウンドとフェルト先端で磨いていました。当時のブログを読み返してみると、もっと荒いペーパーかなんかで下地から作らなければならないという思いはあったようで、「磨き始めは2000番くらいのペーパーかな?」なんて書いていました。後日、「鏡面磨き」の動画を見てみると、もっと荒い耐水ペーパー600番くらいから始めて、「赤棒・白棒・青棒」という固形コンパウンド(研磨材)をリューターのフェルト先端に付けて磨くと鏡面造りができるようだと知って挑戦してみることに。(ちょうど今年は正月休みが長いくて時間のかかる作業も気にならないしね)
先に結果はこちら。左は作業前、右が作業の結果。

comp01

知らんかったこと

60数年生きてきてこんなことも知らんかった、って思うことに遭遇しました。
それは、砥石やペーパーで金属を磨く際に「研ぎ汁」が大事やということ。子供の頃じいさんから包丁やノミ、ナタなどを砥石で磨くことを教わったけど、砥石で磨く時にかける水の意味なんか考えることもなかったし、ただ漠然と方法を習っただけやったんやね。
砥石の粒子や磨がれた金属の粒子が研ぎ汁のなかでもまれてより小さい粒子になってキレイな研ぎが出来るとのこと。
知らんかった。
耐水ペーパーも同じ。
ただ、固形のコンパウンド(研磨材)とリューターのような回転ツールは回転の摩擦熱で研磨剤が溶け出すので水はいらないみたいやね。
これだけ知ってたら大丈夫やろう。と自信満々で作業開始。

では始めてみよう!

動画はこちらで

●作業前の中途半端な磨きのケース

process04_before

全体にくすんで、グロッシーではありますが鏡面ではありません。
ムーブメントは外してありますが、加えて念のため風防も外します。

●#600耐水ペーパーから

小さなものなので、指で水を付けながらペーパーをケースに当てていきます。
#600➡#1000➡#1500と段階的に当ててみました。それぞれの結果は以下の写真。

process02_600
#600の結果

 

process03_1000
#1000の結果
process04_1500
#1500の結果

#1500までいけばかなり映り込みもあると思っていましたが、そうでもありません。と、いうことは下手なのか時間が短いのか、分からないけど・・。ま、反射する光に歪みは少なくなったし、遡ってやり直すのも邪魔くさいので(ホンマは邪魔くさいはあかんよ!)次の段階へ。

●赤棒・白棒・青棒

リューターを買った時に付いていた先端のセットの中に、50×20×8mm位の緑のかけらが入っていたけど、これが青棒だとは知りませんでした。今回いろいろ調べて出会ったのがこの固形コンパウンド(研磨材)です。アマゾンで3本セットで1,580円。
届いたものはこちら。

process01

大きく、重い、ほんまブロックやん。金属加工のプロ以外で、特に素人の趣味でこれを一生のうちに使い切る人は居るのかな?と思うくらいの量です。ホームセンターでチューブ入りのコンパウンドを買うよりも超お得!比類無きコスパです。
それにしても、緑がなんで青なんやろ? ”青丹よし(あおによし)”の青かな?なかなか雅やね。
これを、リューターにつけたフエルト先端につけてケースを磨きます。

process04process05

荒いのから細かい仕上げ用へ、赤➡白➡青(緑)の順です。
リューターにセットした回転する新しい先端をブロックに軽く押し当てると、摩擦熱で固形コンパウンドが溶けて先端に塗布されたます。これをケースに軽く押し当てながら磨いていきます。3段階の磨きを終えたものがこちら。

process04_result

やった・・、鏡面が出ました。周囲の映り込みにもキレがありますね。
正直なところ細かく見ると歪みや荒さがありますが、初めての試みとしては及第点かな?

●ついでに、ラグ上部のみをつや消しにしてみよう

きれいなヘアラインは望めませんが、手元にある道具で、ということでマスキングテープと「スコッチの3M工業用パッド、サビ取り用」で細かなキズを付けてつや消しにしてみます。

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パッドは小さくカットして、マスキングから露出したラグ上部をこすります。ケース・ベゼルの円にしたがって一方向にこすっていきます。角度がズレると仕上がりが汚いので必ず一方向に!
処理がすんだらテープを外して、中生洗剤と歯ブラシでキレイに洗って(できれば超音波洗浄機なども使って)その後完全に乾燥させます。

●外した部品を組み込んで完成。グロッシーからシャイニーに!

完成の図。

result01

グランドセイコーのガラスのような透明感のある磨きには遠く及ばないけど、少なくとも他のセイコー5に比べたらいい出来かな? 鏡面も出たし、シャイニーに輝いています。自分的には3〜4万円クラスの磨きになったのではと満足しています。
延べ作業時間は6時間ほど。無駄ではなかったね!

result02

知らんかったことで作業後に知って後悔したこと

荒い番手から細かい番手へ段階的に磨ぐ場合(今回の様にペーパーの#600、#1000、#1500を使う場合)、例えば#600は縦に磨いて、#1000は横に、そして#1500は縦に、というふうに磨く方向を変えて、前の番手のキズを無くしていくように磨くのが短い時間でキレイに磨くコツだとか。初めに知っていればもっとキレイにできたかも?

#600の耐水ペーパーから始めたけど、「赤棒・白棒・青棒」の粒度は、
赤棒:#300、白棒:#1200、青棒:#3000、だそうです。
と、いうことは、耐水ペーパーの#1500までをキッチリ行えば、赤棒・白棒は要らんかったんか?
そうか、#600の耐水ペーパーのあと、いきなり白棒からいけばよかったんか?
または、そもそも耐水ペーパーは要らんかったんか?
てなことを作業を終えた後に思っています。
ま、今回はSNKのケースの表面に(本来のケースのつや消し処理のせいか)細かいけれど結構深いデコボコがあったようなので、耐水ペーパーから始めたのは意味があったことだと自分を慰めています。

リューターと研磨材を使って磨く際、高回転や、強く押し当てることで過度に熱を持たせると「バフ焼け」と言われる現象で対象が黒ずんでしまうこと。
これは実は作業中にあったような気がする。ケースがむちゃくちゃ熱くなって、結局やさしく根気よく磨くのがいいようやね。実際最後の青棒なんかホント、フェザータッチで軽く磨くと驚くほど上手くクスミ・ニゴリが取れていくということは今回の経験で分かったことです。

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ちなみに写真のバンドは、ハドリーローマ MS-784 Brown、オイルタンレザーの馴染みのいいバンド。フォーマルにもカジュアルにも違和感なく、しかも防水仕様のオールマイティ。興味ある方はこちら↓
http://www.ngart.gr.jp/watchband/

そうかぁ、そういうことか。と後になって分かることも多い今回の6時間に亘る作業ではありました。
機会があれば次回、完璧に行いたいと思っています。

今回の費用はフェルト先端1,200円(28個)、赤白青棒1,580円しめて2,780円、ムーブメントや風防を外したりと、手間も経費もかかった約6時間の作業。結果、どのプロセスが効果があったのか正直なところ分かりませんが、特に気になっていたクスミは消えてクリアな鏡面を出せたし、グランドセイコーには遠く及ばずとも、ま、成功とします。
・・・・磨きは”荒目➡細目”を段階的に丁寧にという基本が大切、を改めて実感。
・・・・それにしても、荒目・中目をもっと丁寧にやればもっとキレイな鏡面にできたのかな?