古時計のバンド交換と、”歩度”と”タイムグラファー”

ここ一週間ほど、異常に暖かかったこともあってか桜の花も開花間近でしょうか。つぼみがピンクに染まりだして、春本番の予感がしますね。いい季節です。
大量に飛散する花粉がこたえる季節でもありますが。僕の花粉症も近年ましではあったのですが今年は目の腫れが酷くてしんどい思いをしています。

さて、今回は古時計いじり。またまたラドーです。

僕らが子供のころから成人するくらいまでかな?舶来の時計ではとてもポピュラーで有名なメーカーでしたね。
前にいじらせてもらったモンちゃんのラドーは彼が若い時に何かの記念に贈られたというシルバーホース。
今回は同じく友人のシンちゃんが親父から引き継いだ金時計、ゴールデンホース。やっぱり昔はラドーはポピュラーやったんや。
古い時計やけど、バンド変えたら使えるかと思て、似合うバンドないか?」と訪ねてきたシンちゃん。
バンドはハドリーローマMS-836/Brown をお買い上げいただきました。アリゲータグレイン、セミグロスの上品なバンドです。美錠も金なのでこの時計にはちょうどいいかな。

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しかし、時計自体は長年手入れもしていなかったのか手垢かなにかわからないものでドロドロ。
これじゃ、バンド変えても代わり映えせんで・・・。ちょっとキレイにしとくから僕に数日預けとき。」ということで数日預かってケースだけでもキレイにしてやることにしました。バンド買ってもらったお礼にね。
で、帰りがけのシンちゃん、「これな、無茶苦茶進むんや。一日30分以上進む。ま、別に分かってるからええねんけど!」と明るく言い残して去って行くのはいいけど、一日30分?気になりますね。

そんな顛末で預かったこの時計、なんと57石!。ただの三針のデイト付きで57も石いるんか?無駄に飾ってるだけちゃうか?とも思いますが、調べるとラドーが1957年に RADO UHREN AG に社名変更した記念に製造されたらしく、高級機の位置づけとのこと。
・・・そうか、エエ時計なんや・・・。
そういえば、ボロボロにはなっていたけど、付いていたダークブラウンのバンドは本物のアリゲータでした。
・・・そうか、高級機なんや・・・。

ケースをキレイにしたる!とは言ったものの金メッキ。削ったら剥げるかも?
これも調べたらゴールデンホースの金メッキの厚さは 20ミクロンとか・・・普通の金メッキは0.2〜10ミクロンらしいので相当の厚付けのようです。めっちゃ分厚いよ!って言ってるのだからチョットくらいきつく磨いても大丈夫そうやね。
ということで、リューターと青棒で慎重に軽く磨いた結果がこの写真。一皮むけてピッカピカになりました。幸い風防も大きなキズもなく全体にキレイさは良好です。

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オークションに30,000円強で出品されている同型の写真よりは絶対きれいかな。程度のいい90,000円位で出ているものと比べても遜色ないようです。ま、こんだけキレイになったらシンちゃんビックリしよるやろ。と、満足な上がりです。

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さて、まだ時間もあるし、気になっていた「一日30分」を調整してみたろ!と、

人の時計で初めての歩度調整に挑戦です。

歩度の調整は、テンプ部分のヒゲゼンマイの長さを調整している緩急針をチョットずつ動かして行います。と言うことは知っていたので先ずは初歩と言うことでここだけ触ってみることに。(エエ〜ッ!? 人のんで試すってか?それ、あかんのちゃう?

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写真の「A」が緩急針。遅れ・進みはこれで調整。ヒゲゼンマイに干渉しヒゲゼンマイの実質的な長さを調整します。(ということです。)
ゼンマイの外側(写真左方向)に動かせば長くなって時計は遅れる、内側(写真右方向)に動かせば短くなって時計は進む。柱時計の振り子と一緒で、錘の位置を上げたり下げたりで振り子の長さを調整しているのと同じですね。
「B」はヒゲ持ちと言うらしく、ここでヒゲゼンマイの端を固定しているもの。
ヒゲゼンマイでテンプが左右に振れて、連動してアンクルが左右に動くのですがこの左右の動きが均等でない場合のことを「片振り」と言うらしく、これを均等に修正する時にのみ動かすものらしい。・・・・う〜んややこしい。コレには触れずにおこう・・。

実際どのくらい狂うのか試してみると、ほんと、みるみる進む。秒針を合わせた他の時計と並べ比べただけで早いとわかる。ものの2〜3分もたてば、3秒くらいは進む。
そこで、緩急針をマイナス方向、ヒゲゼンマイを長くする方向にチョンチョンと調整。他の時計と並べて観察。また緩急針を調整、他の時計と並べて観察・・・・これを1〜2時間おきに繰り返し、4回目くらいの調整で、結構上手くいって「な〜んや簡単やん!」、と一日おいて、結果なんとか一日+2分以内くらいに出来たのですが・・・。

そんなにあまくないで!

その後、たまたま数時間裏向きに伏せた状態で置いてあったことがあって、表をむけて時刻をみると・・、ややっ!何これ、遅れてるやん、それも並の遅れやないがな・・。どういうことかいな?
何時間伏せて置いてあったは分かりません。でもその数時間に10分以上遅れています。
その状態で表を向けて、他の時計と比べて数時間。遅れはそれ以上にもそれ以下にもなりません。
表向き(平置き)でほぼ正確。裏向きでダダ遅れ。という状態です。
そこで、12時・3時・6時・9時をそれぞれ上にして状態を見てみると、裏向きの時よりも遅れます。しかも各向き、遅れに相当差があることがわかりました。
要するに、元々平置きの場合のみ著しく進んで、他の向きではそれほど進んではいなかったところを遅れ方向に調整してしまったものだから平置き以外の場合は全て遅れることになったようで・・・。
それは分かったけど、姿勢の差でこれだけそれぞれに精度の差があると、もう自分の”カン”頼りでは何がなんかわかりません。

これはもう機械に頼るしか・・タイムグラファー登場!

歩度を測るタイムグラファーという機械があるのは知っていましたが、高価だし、あれば参考になるだろうけれどこのために買うのはもったいないし・・いやいや買えないやろ・・などと考えながらいろいろ検索していると見つけました。
iPhone用のアプリ、「Watch Tuner Timegrapher」。1,600円
えぇっ?1,600円でタイムグラファー? 歩度をきっちり計ってくれるあの高価な機械が、アプリで1,600円。早速買ってみました。
タイムグラファーという機械の使い方も分かりませんが、なんとか測れるやろう!

早速アプリをダウンロード。iPhone附属のマイク付きイヤフォンを差し込んで、アプリを立ち上げると、こんな画面。

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チンプンカンプンですが、HELPに詳しい説明が。・・英語なので実際ようわからんのですが、おおよそのことは分かった、くらいのとこで、イヤフォンのマイクを時計の裏やリューズ、また側面に当てて、”START”をタップ。

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※これは試しにやってみた SEIKO SARB035。以下の写真もラドーのものではありません。

おお、音を拾ってるんやね。
すぐに時計の振動数を計測できたようで、この時計は18,000振動、5振動/秒。うん、合ってる。
計測が続いて、秒単位の日差、そしてややこしいと言っていた「片振り」をms(ミリセカンド?)で表示(0に近いほどいいらしい)、その他テンプの振り幅なんかも計測してくれます。
メインのグラフはドットで連続表示され、状態が目で分かるようです。進み気味なら右肩上がり、遅れ気味なら右肩下がりみたいに。

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これも SEIKO SARB035 の計測です。右上の BPH 21600 は 6R15 の振動数です。

まだ、詳しいことは分かりません。使いこなしたらまた書こうと思っています。

とりあえずは、日差がわかれば。ついでに片振りも調整できそう。

その後の奮闘を文字にすればどれだけ長くなるか分からないので省略します。とにかく試行錯誤で緩急針とヒゲ持ちを調整。
片振りを0から0.5msくらいに調整して、緩急針で各方向日差の開きを極力抑えるように緩急針を調整して・・・。
しかし時計の向きの違いでこんなに開きがあるのは、やっぱり古い時計やからかなぁと半分あきらめながら、
なんとか、平置き以外での遅れを1〜3分くらいにして、平置きの進みを10分強までには出来たのですが。
(ふつう腕に着けていれば、平置きの状態は比較的少ないだろうと想像して、平均的にある程度の精度を期待するしかないかな?)
あとは実際腕に着けてもらって具合を見るしかないかな?

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でも、タイムグラファーってすごいね。数字で分かるんやから。カンではどうしようも無くても数字が分かれば方向性が見えるよね。
すごい。
このアプリ、計測の記録も詳細に残せるようなので、いろんなケースで計画的に記録すれば、たぶん目に見えない時計のデリケートな動きがわかるかも。
そしたら、時計の普段の扱い方も変わるかもしれないね。

成功か失敗か、分かりません。でも今まで知らなかったことが少しでも分かるようになって、人の時計を実験台に進歩したように思います。(シンちゃんゴメン)
今度は自分の、最近遅れがちなセイコー5でいろいろ試して、(ほぼ)正確な歩度調整の技術習得に挑戦したいと思っています。

後日談

時計を預けていったシンちゃんがなかなか取りにこないので、就寝時間以外、約18時間自分の腕に着けて進み・遅れ具合を試してみたら、なんと、ほとんど狂い無く動いた!
問題は時計を就寝時どんな向きで置いておくか、やね。それさえコツが分かったらきっと実用に耐えるやろうと思います。きっと成功やね・・・!